2024-02

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【短編小説】僕は正直に生きる

肌寒い風が気分を害さないほどの強さで吹いていた2月最後の日。僕は緑色のジャンバーに両手を突っ込み、バス停に向かっていた。バス停に向かうのはバスに乗るためではなく、バスから降りてくる奈々未を迎えに行くためだ。 奈々未とは高校時代に半年ほど付き...
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本は娯楽なのだろうか

なんの取り柄もない僕は、そのことに対してコンプレックスを抱いていた。運動神経は良くないし、見た目もそこまでは悪くないけど、良いとは絶対に言えない。このまま人生を終えていいのだろうかと、自問自答を繰り返す日々を送っていた。 答えはいつも『終え...
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失恋した私

2年付き合っていた彼氏と別れた私は枕に顔を埋めていた。どこか不器用なんだけど、その割にちょっとした気配りや料理ができたりで、私はそんな彼に惚れていた。 彼は想像力に長けているのか、話が面白かった。ちょっとしたどうでもいいような話題でも、すぐ...
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【短編小説】孤独と向き合う

「裕太くんちょっと雰囲気変わったよね」七瀬がお刺し身を口に運びながら言った。どうやらワサビはつけないらしい。 それにつられて僕もお刺し身に手を伸ばした。「そう?本を読むようになったからかな」 僕と七瀬は高校時代に1年ほど付き合っていた。僕は...
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【短編小説】先生から借りた歴史本

「なんで歴史の先生を目指したんですか」僕が先生に訊いた。 「うーん、歴史が一番得意だったからかな~」先生が言った。近くで先生の顔を見ると、口紅の色がピンクだった。そして、ほんのりとした花の香りが漂ってきた。 「はぁ、歴史が得意だなんて変わっ...
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将来という首輪をかけられた現代人

秋元はYouTubeを観ながらただぼんやり、ただただぼんやりと、何者かになりたいと思った。そう思い立っては絵を描き、文章を書いた。それを1ヶ月ほど続けた後、いつも同じ理由で諦めた。 その諦める理由とは、漠然とした将来への不安だった。小説が好...
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【短編小説】埋められない差があるんだ

「万引きしたことある?」僕が隣に座っている根本に訊いた。 根本はビールを一口飲み「ないよ」と言った。「でも、万引きを疑われたことはある」 「根本くんって、なに考えてるか分かんないから怪しまれそう」そう言って前に座っている西田さんが笑った。そ...
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【短編小説】花とハチのような恋

「ショートカットキーを使いこなせる男性どう?」執筆作業を進めながら僕が奈々未に訊いた。「そのくらい出来て普通だよ」奈々未は苦笑いを浮かべて答えた。 僕は付き合ってもいないのに、元カノである奈々未の部屋にパソコンを持って転がり込んでいた。理由...
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【短編小説】幸せを噛みしめる

その子を見た瞬間、可愛いとは思わなかったが、愛嬌の良さは人一倍あるように感じた。見たのはほんの一瞬である。上司と僕が魚を捌いている部屋に入ってきて「おはようございま~す」と挨拶して走り去っていった。その子は新入社員だった。 帽子とマスクをし...
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ライブ終わりのバー

ライブ終わりの僕たち4人は「ピンキー」というバーで反省会をするのが日課になっていた。僕と筒香と田中はウィスキーのロックを頼み、石川はカクテルを頼んでいた。石川はギター担当ということもあり、見た目が派手なものを好むところがあった。 僕たちは高...