短編小説:福神漬けよりウィンナー

僕は昨夜作ったカレーを温めながら、その横の火口でウィンナーを2本焼いた。僕はカレーを食べるとき必ずウィンナーを焼く。ウィンナーと福神漬けどちらかを選べと言われたら僕はウィンナーを選ぶだろう。そのくらいウィンナーが好きだった。

現に僕の冷蔵庫には福神漬けが入ってない。あるに越したことはないのだが、いざスーパーで買い物をするとなると「また今度でいいや」と思ってしまう。しかしウィンナーは違う。「また今度でいいや」と思ったことが一度もない。

小学生の頃からだろうか。「スキー場で食べるカレーが好き!」と母に言っていた記憶がある。しかしそのカレーにはウィンナーが入っていなかった。

おそらく一人暮らしを始めてからだ。料理の経験がない男子大学生にとってはありがたすぎる食材だと思う。焼くだけで食べれる食材なんてあまりないだろう。プロが焼こうが、素人が焼こうが香薫ウィンナーの味が変わることはない。そういった優秀な食材は当たり前かのように暮らしの隙間にするりと入り込む。

僕はスーパーに来るとまず最初にすることは香薫ウィンナーを1袋カゴに入れることだ。これはとても機械的に行われる。車で遠出する際ガソリンを満タンにするだろう。それと同じだ。買い物カゴにウィンナーを入れることで他の食材にも目がいくようになる。

僕は焼いたウィンナーをご飯に乗せ、その上からカレーをかけた。たまにカレーの上にウィンナーを乗せている人を見るがまるでセンスを感じない。どちらでも味は同じだし、見た目的にはカレーの上にウィンナーを乗せている方が良いかもしれない。ただ、引っ掛かりを覚えるのは僕だけだろうか。ないがしろにしてはいけない気がする。

カレーをものの5分で平らげお茶を一気飲みした。それからコンビニで買ってきたサラダを食べた。『タンパク質』という言葉が入っている商品を最近よく見る。しかし、蓋を開けてみるとサラダの上に申し訳ない程度のささみ肉が乗っかっているだけだ。よくもこの量で。サラダの内容はほぼ同じでも商品名を変えるだけでターゲットはいくらでも変えられるのかもしれない。なんだかやるせない気持ちのまま僕はサラダを口に運んだ。

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