見晴らしの良い景色のはずなのに、電線がそれを邪魔して視界を圧迫する。僕は電線と電線の間からその素晴らしい景色を眺めた。いや、眺めたというより覗いたと表現するべきか。
とにかく電線が邪魔でしょうがない。2階の窓を開けると手が届かないほどの目の前にあるのだから。
その電線に小鳥がとまっている。彼らは朝の5時ぐらいから鳴き始める。僕にとっては天然の目覚まし時計だ。ちなみにその音で目覚めたことはない。小便で起きた時に気づいただけだ。
チュンチュン。ピヨピヨ。
小鳥たちは、そういった言葉では言い表せないほど複雑な鳴き方をしている。言葉は正確するぎる。もっと曖昧な音だ。小学生がリコーダーを適当に吹いて、たまたま耳障りの良い音楽を奏でてしまったような。そんな曖昧な音。
遠くからハンマーで鉄を叩いている音が聞こえてくる。おそらく〇〇鉄工だろう。こちらの音は小鳥たちとは真逆で正確だ。カーン、カーン、カーン。
1セット3回。一定のリズムでハンマーを振り下ろしている。同じ人間同士なのでリズム感覚が似てくるのは当然かもしれない。CMから流れてくる曲は記憶に残りやすく設計された音楽だ。それを日本国民すべての人が毎日聞いていれば自然とリズムの感覚も似てくるだろう。
心臓はどうだろう。人間の、いや、全ての動物のリズム感覚に影響を与えているのは心臓かもしれない。生まれてきてから心臓が止まっている人など存在しない。見えない所で、意識していない所で心臓はリズムを刻み続けているのだ。
動物の種類によって鼓動のスピードが違うのは馬鹿な僕でも分かる。小鳥たちの鼓動は鳴き声から推察するに人間よりもはるかに速い。なので小鳥たちの鳴き声は曖昧に聞こえるのかもしれない。
人間が聞き取れないのも当然だ。鼓動のスピードが違うのだから。
心拍数の違いがリズム感覚に影響を与えているのは新たな発見だ。僕は博士ではないがこれが僕の仮説としておこう。
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