ある日のピロートーク

左足に痛みを感じ、病院で診てもらうと大腿骨壊死と診断された。どうやら股関節を支えている太ももの骨がなんらかの原因で脆くなり、壊死しまったようだ。壊死とはなんとも嫌な言葉である。

関西弁の三上先生によると、手術をして人工関節というものに変えないかぎり痛みは取れないらしい。まぁつまり、骨が治ることはないということだ。手術への抵抗感がなかったので、とりあえず僕は1週間後に入院することにした。

さっそく自宅に戻り、同棲している彼女にそのことを伝えた。彼女は一粒の涙をぽろりと流し、下を向いていた。「ごめんね」と声をかけると下を向きながら頭を横に振った。

彼女の手を軽く握り、僕は優しくキスをした。口下手の僕は言葉を使って慰めるのが苦手で、抱きしめたり、キスをしたりして彼女の揺れている心を包み込んだ。

彼女を抱き寄せた瞬間、シャンプーの香りと女性の匂いが鼻腔を刺激し、胸のあたりに歪みを感じた。それに呼応するかのようにペニスが勃起した。病院にいたせいだろうか。病人ばかりの空間にいると、23歳の彼女がいつも以上に若々しく見えた。白くて張りのある肌。か弱さとしなやかさを併せ持った肉体。股間を押し当てたくなるお尻。

僕は幸せ者だ。ディープキスをして、服や下着を全て脱がしてお互い裸になった。彼女の皺ひとつない真っ白な首筋にキスをして、プリンのような乳房を優しく愛撫した。なぜ乳首に吸い付きたくなるのだろう。もしかしたら、赤ちゃんの頃の癖が本能として強烈に焼き付いているのかもしれない。

彼女の小さすぎず大きすぎない乳首に吸い付くのを我慢し、観察するかのように指先だけで彼女の乳首を優しくいじった。それは人に不快感を与えない穏やかな風のような力加減だった。「気持ちいいかい?」と訊くと、消えそうな声で「うん」と答えた。いつも以上に前戯に時間をかけ、僕と彼女の早る気持ちを焦らした。それはまるで餌をあげる前に「待て」と言っている飼い主とペットのようだった。

彼女の膣に指を当てるといつも以上に濡れていた。膣口に2本の指を当て、円を描くようにゆっくりと動かした。それと同時に乳首に舌を絡ませ、彼女を快楽の空間に漂わせることに集中した。優しく、ゆっくりと。彼女の繊細な心を崩さずに、そのままゆっくりとした動きで最初のオーガニズムへといざなった。

「足痛くなかったの?」布団にくるまりながら彼女が言った。

「う~ん、たまに痛むぐらいかな」バックの時、内ももに痛みを感じたが言わないことにした。

「いつもとバックが違った」独り言のように彼女が言った。

ギョッとした。気づかれていと思ったのだが。「あぁ、少し痛みを感じたからゆっくり目にしたよ。不満かい?」

「ゆっくりの方が気持ちいい」また独り言のように彼女が言った。

「そうなんだ。速い方が気持ちよさそうに思えるけどね」AV女優が大袈裟に演技をしているのは学生時代に気付いていたが、『もっと突いて』というセリフは未だに信じていた。なので僕は、もっと突くことを常に意識していた。

「遅い方が気持ちいいよ」彼女がクスッと笑いながら言った。彼女の吐息が胸に当たった。

「なんで?」と僕が訊いた。彼女は少し悩んでから「マッサージだってゆっくりされた方がリラックスできるじゃん。それと一緒だよ」と言った。

「たしかにマッサージが速かったら嫌だな」

「そうでしょ?」

「だけど、マッサージってどちらかというと前戯じゃないか?」そう訊くと、彼女は「たしかに」と言ってから、僕の乳首を触った。

「ゆっくりだと『入ってる』って感じがして気持ちいいの」彼女は僕の乳輪を器用に指でなぞりながら言った。

彼女の指を乳首から離して僕が言った。「なるほど、なんとなく分かるかも・・」そう言ってから適切な言葉を探した。しかし彼女がまた乳首をいじってきたので、思考は中断された。

「お尻に指入れてあげよっか?」彼女が言った。

「ふん、遠慮しとくよ」僕が答えた。興味本位で入れてほしいとは思ったが、彼女に入れられるのは気が引けた。

「いつも結城くん言ってるよね。人の言葉を聞くより自分で体験した方がいいって」彼女は乳輪をなぞるのを辞め、初めて粘土に触る少女のように、僕の乳首を指先で押していた。

「まぁね。言葉には出来ない気づきというものがあるから」

「じゃあ、入れていいよね」YESの答えを願うように彼女は乳首をいじった。

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