【短編小説】女子とたこパ

萌里の部屋に入ると、女の子らしい柔らかい花の香りが鼻腔を刺激し、僕の胸を高鳴らせた。

萌里は大きめの真っ白なTシャツを着ていた。そのTシャツは萌里が履いているであろうショートパンツをすっぽり隠しており、そこから白くて健康そうな足がスラリと出ていた。その姿が僕の胸をさらに高鳴らせた。

大学4回生である僕たちは、学生最後の夏休みを楽しみたいということで、萌里の部屋でたこ焼きパーティーを開催することになっていた。他にあと2人来ることになっているのだが、どうやら遅れてくるらしい。

「うわぁ、きれいな部屋だね」来客があると分かっていたら、100人中100人の女性が部屋を片付けるだろうと思った。それでも整理整頓が行き届いていたので思わず声に出してしまった。

「普段はもっと散らかってるよ」恥ずかしそうにそう言った。

とても普段散らかっているようには見えなかった。社交辞令のようなものだろう。本棚には本が10冊ほどあり、壁にはドライフラワーが掛けられている。テレビの横には観葉植物が置いてあり、雑誌に出てきそうほどセンスの良い部屋だった。

ベットの上にはどこかで見たことのあるようなキャラクターのぬいぐるみが置いてあった。萌里がこのベットでオナニーをしていると思うと、待っていましたと言わんばかりに勃起した。

「お酒飲む?まだみんな来てないけど・・」萌里が言った。

「飲みながら準備しよっか」

「うん、持ってくる」そう言って萌里はお酒を取りに行った。

萌里が両手に缶ビールを持って床に座る瞬間、Tシャツに隠れているショートパンツが見えた。それだけでなく、ショートパンツに隠れている太ももまで見えた。しかしパンツは見えなかった。

こういう時僕は、シャッタースピードを限界まで上げた一眼レフカメラのように、瞬間を切り取る能力に長けている気がする。

乾杯して一口飲み、勃起を抑えるため、さらに二口目を飲んだ。夏場ということもあり、女子の部屋ということもあり、ビールのほろ苦い味わいが美味しく感じた。この時初めて、ビールはその人の環境や背景で味わいが変わるということを知った。

「たこ焼きの準備していこうか?」気を紛らわすため僕が質問した。

「じゃあ、タコ切ってよ。料理したことある?」

「まぁ、タコくらい切れるよ」微笑しながら軽くビールを一口飲んだ。

萌里が立ち上がる瞬間、またショートパンツとその奥が見えた。いや、見えたというよりタイミングを見計らって盗み取ったのだ。

僕がタコを切っている間、萌里はたこ焼きの粉を水で溶いていた。たこ焼き機を持っているぐらいだから作り慣れているのだろう。動きに無駄がなかった。

「たこ焼きに水を入れるなんて初めて知ったよ」

「そりゃ、入れるでしょ。作ったことないの?」

「う~ん、ある気がするんだけど・・」万引き犯が店内で不自然な動きをするように、勃起している時というのは受け答えが不自然になる。それは勃起を悟られないためでもあるだろうし、血液が股間に集中して、脳に行き届いてないのが関係しているかもしれない。

テーブルの上にタコやたこ焼きの素やらを配置し、いつでも作れる状態に場を整えた。

キッチンの方からガチャガチャと音が聞こえてきた。棚からたこ焼き機を引っ張り出しているのだろう。僕はビールをぐいっと飲み、「ふぅ~」と息を吐いた。

勃起は一応治まってはいたが、コタツの電源を切った後のように、熱源はまだ冷めてはいなかった。

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